緒永廣康 「ソメチメス」(sometimes)22

13.愛すべき女学生達

 理由も無いのに立ち止まって、何故だろうなんて考える年頃の彼女達は、きっと僕

の心の中など判りはしないだろうが、でも、その実、何もかも見通しているようで、

時々ハッとさせられるのである。とにかく彼女達は新鮮で、愛らしくて、そんな彼女達

を少女と呼ぶ室生犀星氏にとって、そんな少女の死は小説の最初に述べてあるように、

いたみつくせない美しさとはかり知れぬ悔しさ、そのものであったろう。

 彼女達は一日のうちで、何度となく大人と子供の間を行き来しながら、その奥に、

僕は僕ににとって本当の安らぎあるのだと信じている。だが、どのようにしてその安ら

ぎを感じ取ればいいのだろうか。小説からは可能な答えは何も見いだせない。何故な

ら、それはもう作者にとって関係ない事。彼は父親のように優しく包み込むだけ。そし

て僕はと言えば、明日になると何が起きるのだろうなんて楽しみにしているだけ…。

 僕はいつも口ずさむ歌がある。直訳すると、

     聞いてごらん

     僕のあの娘が笑っているのを

     でも、何故だか教えてくれないよ

     心の奥深くにあることなのだから

彼女達の優しさは誰でも知っている。そしてその不可解な行為も。作者はそれをそのま

まに伝えている。その一つ一つ取り上げるのは物好きな人の任せておけばいいが、悲し

みを感じさせないこの悲しみは一体何だろう。彼女達は死んでゆく。唯、思い出を残し

て。そしてそれに浸りながら、僕は酒を呑むかわりに、泣き続けることが出来るだろ

う。

 沢山の詩人が訪れて、彼女達を言葉に変えた。そのどれもに真実と嘘とがあったが、

僕をこんなに優しくした作品は今までに無い。題に挙げたように、僕はここで僕の周囲

にあって蝶のように飛び回る彼女達の素晴らしさを多く書きたかった。結果はどうであ

れ、これからまた僕は、色々な言葉を書く度に、そのどれもが決して僕の為でだけでは

ない事に気づくだろう。それこそ愛すべき彼女達の為のものなのだ。しかし、それがす

べてでも無い。誰もがそうであるように、僕もまた浮気者である。そして彼女達も…。

僕は永遠の葛藤であるこの事実を、再び考えなければならない。それは一人では判らな

いだろう。また二人でも判らないかも知れない。しかし、選ぶべき相手だけは知って

いるつもりだ。<終>1973年

 

      *       *       *       *

 

 高校2年の時の現国の読書感想文のテスト。作者は室生犀星だと判るが、恥かしい事

に題名を失念してしまった。授業中の試験なので時間が無く、後半は何が言いたいのか

分からない内容になっている。要は自分には好きな子がいるよと言うのを回りくどく書

き、本題から外れてしまっている。若気の至りと大目に見てもらいたい。2017年9月