緒永廣康 「ソメチメス」(sometimes)18

11.中国1996年(南京、武漢、上海)2.

 今回訪問した各港湾局や公司では皆が、将来、上海を商業の中心とすることは、国の

政策であると異口同音に唱え、今後日本からの合弁の申し入れを期待するといった意味

の言葉を何度も聞いた。そして上海では更に具体的な地区別の開発計画を聞き、それら

の説明を裏付けるかの如く、林立する高層ビル群や建設中の施設も見た。

 そして都市部の大通りは、何処も埃と喧騒の坩堝である。即ち所構わず横断する歩行

者、途切れることの無い自転車の波、警笛を鳴らしまくり、少しでも前へ進もうと無理

な割り込みを行う小型のタクシー。マクドナルド、ケンタッキーといったファストフー

ドの看板が並び、最早、人民服姿は見当たらず、スーツやジーンズ等思い思いのお洒落

をした若いカップルは、当然のように手をつないで歩いている。不思議に思ったのは、

2008年に開催が決まったオリンピックに誰も興味を示さない事だ。「あれは北京が

やる事」という理由で、まるで別の国の話のようだ。「北京は政治、上海は商業」と

いう棲み分けが成されていると言ってよい。それより長江上流に建設される三峡ダム

方が重大な関心事で、本来、発電を目的としているが、水位が安定し内陸部まで大型船

が航行出来るようになると言う。

 確かに「改革・開放政策」は促進されている感はある。しかし一方、立派なビルの裏

手には、あばら家が立ち並び、駅や名所旧跡等、人の集まる場所には必ず大勢の物乞い

がいる。恐らく「民工潮」と呼ばれる農村部から流入する膨大な数の人達の一部なのだ

ろう。

 「改革・開放政策」により都市部の開発は進んだが、農村部との深刻な所得格差が

生じたという。農民は十倍の所得を求め出稼ぎに行き、田畑は放置され砂漠化が進む。

公称12億の人口を抱える中国の食糧危機は誰もが指摘するところである。<続>