緒永廣康 「ソメチメス」(sometimes)15

10.韓国1995年(釜山、慶州、ソウル)3.

3. 冷たい?店員

 研修旅行中の食事は幾分キムチの臭いに閉口したものの、基本的には何でも食べられ

る体質が幸いし事なきを得た。ただ気になったのはレストランの店員がどうも冷淡と

いうか、所謂愛想が無いことである。別に我々が「俺は客だ」という態度をとったつも

りはないのだが、例えば何かをオーダーしても、返事はないしニコリともしない。かと

言って、ちゃんと物は持って来てくれる。儒教道徳に基づいた「東方礼儀の国」を自負

韓国のイメージとこの現実がうまく結びつかない。この「無愛想」は日本人韓国旅行者

の定番の感想であるという。このことから韓国の礼節は単に形式だとの批判も聞くが、

よく耳にする「年上の人の前で煙草は吸わない。酒を受ける時は横を向いて飲む」に

代表される「孝」の美風とサービス精神は別物なのである。それだけの事であろう。

現地ガイド女史は「韓国はサービスの面で遅れている」という言葉で説明し、レストラ

ンで彼女自身が店員に代わって我々に食器やグラスを配る姿を何度も見た。

 韓国では接待業は賤業であるらしい。古田博司の「朝鮮民族を解く」によれば、接待

業の中でも、特に食堂、床屋、酒場が卑しまれ、さらに食堂は床屋を、床屋は酒場を

蔑むといった序列があり、学校において「サービスをする人への感謝」を教化している

という。私としては賤業についたことが「恨」となって愛想が無くなったのだと短絡的

に考えてしまう部分もあるが、何にでもつい曖昧に微笑む傾向がない事だけは事実であ

る。

 

4. 韓国は家族命?

 現地での移動はすべてバスである。ガイド女史は我々に先ず韓国語の挨拶を教えて

くれた後、韓国についての様々な事を語った。その中で特に印象に残ったのは、男が

非常に大事にされているらしい状況である。韓国では跡取りとしての男子が重要視さ

れ、その為嫁はとにかく男児を出産しなければならない。女の子でも生もうものなら、

姑から露骨に嫌な顔をされ、次は必ず男とのプレッシャーがかかる。極端な話、男が

生まれるまでガンバル傾向にあるという。そして結果として男児が生めなかった嫁は

悲惨である。離婚されても仕方がないし、夫がよそで子供を作って来ても文句は言えな

い。従って息子を養子に出すなど言語道断の行為なのだ。韓国には確か姦通罪があった

はずであるし、ホンマカイナ?と思うが、ガイド女史は真面目である。

 また同じ姓名同士の結婚は出来ないという。同じ姓が多そうな韓国で、そんな事が

あるのかと不思議に思い調べてみると、確かにあった。ものの本によれば、朝鮮民族

の社会は宗家という男子の単系血族の集合体から成り立っており、先祖発祥の地(本貫

)を冠した同族名で示され=例えば「慶州李」=本貫が異なれば問題は無いが、同族

では結婚出来ない。これは同姓婚の禁止として法律になっているとある。しかも済州島

の高氏、梁氏、夫氏は、先祖が島の三姓穴という穴から同時に飛び出してきたという

神話から同じ宗家だと信じて婚姻しないそうである。そしてロイヤリティの対象は国や

政権よりも、自分の門中にあり、先祖の勲功に多大な関心を示す。

 在日韓国人作家つかこうへいの「娘に語る祖国」にも次のような件がある。「韓国の

おじさんの家には、百科事典みたいに何冊も家系図がありました。出身も慶尚北道

金銘金賀という名家だと、よく自慢していました」

 ちなみに先の男児優遇についての言及は見当たらなかったが、本当なのだろうか。

<続>