緒永廣康 「ソメチメス」(sometimes)58

38.ただその四十分の為だけに(「告別演奏會顛末記」その後)(20)

 

 ムーの摩訶不思議な新曲を何とか征服した翌日、クマは「ヒナコさんグループ」を定

められた練習日ではなかったが緊急招集した。用件は勿論、自分が考え抜いたアレンジ

を皆に聞かせ称賛を得る為で、事、音楽に関しては気の短い彼にすればいつもの事だっ

た。

 その日の放課後、3-1の教室に三々五々メンバーと殆どマネージャーと化したメガ

ネユキコが揃う中、アグリーだけがいつになく暗い表情でやって来た。「どしたの」す

かさず全方位外交のヒナコが声を掛ける。

「ああ、今朝起きたら文太が死んでいた」

「えっ、文太」ヒナコが首を傾げた。それに対してはクマが代わって答える。

「手乗り文鳥の文太の事だよ」

「アグリーどんは文鳥飼ってたんだ」

「ああ、雛の頃からずっと、もう10年位になるんだけど」

「それって寿命が来たって事」

「いや、どうかな。そんなに弱ってたとは思えないんだけど。あの、歳取ると止まり木

から落ちたりするらしいんだ」

「ふーん、鳥って結構長生きするんだ。でも悲しい」

「そりゃあ、結構なついていたからね。文鳥は、知らないと思うけど優しくしてやる

と、飼い主にすがりついて来るんだ」

「人間よりも人間性があるのかな」クマは遠くを眺めるような目をして呟いた。

「人間はなまじっか余計な知恵があるからややこしいだけさ。それよか、その画期的ア

レンジとやらを聞こうじゃないの」

 「オッケー」クマはそう答えると、早速説明を交えながらギターを例のチューニングに

合わせた。EBDGAD、一体どうやったらそんなチューニングを思いつくのだろう

か。もしかしたら、マリファナとかいう覚醒剤でトリップしなければ考えつかないもの

かも知れない。しかしクマ達はマリファナどころか煙草さえ吸った事は無かった。

 アグリーは勿論そのチューニングを知っており、ムーとヒナコも3月の2-4フェア

ウェル・コンサートでI,S&Nが演奏した「グィネヴィア」という曲で聞いた筈だった

が、当然覚えてはいなかった。 仮にもし覚えていたとして、チューニング方法まで判る

筈もないが。それでもムーはまるで大事な授業を受けているような真剣な表情を浮か

べ、食い入るようにクマの一挙一動を見守っていた。

 チューニングが済むとそこからがクマの真骨頂であった。コード表などには一切記載

されていない弦の押さえ方をして、独特のコード進行を披露する。もし仮にそれらのコ

ードを表記するとしたら、多分sus4 や m(#5)という和音になると思われた

が、ある程度熟練したギター小僧でも、とてもコードネームを見て瞬時に押さえる事は

不可能な筈だった。

 そして、一通り曲の最後まで弾き終えるとクマはムーに気掛かりだった事を尋ねた。

「オリジナルのキーはCmだったけど、これだとEmになる。声が出るかな」

ムーは実際にサビの部分を歌ってみて、ニコッと笑った。「大丈夫です。ちゃんと出ま

す」

 それを聞いてヒナコはまるで子供を褒めるようにムーの頭を撫でたが、アグリーは少

し渋い表情を浮かべて言った。

「よく考えたと思うけど、これじゃあ一般受けはしないな。全くキャッチーじゃないん

だよね」

 クマは苦笑いしながら答える。「今更俺にそれを望む訳」

それを聞いてムーが久しぶりに男の子言葉で言った「僕はこれは素晴らしいと思う」

 「それじゃあこれで決定」三階の窓の外を鳶のような大型の鳥が、遠く多摩川付近の森

を目指して飛んで行くのを眺めながらクマがそう宣言した。そして『文鳥の寿命が十年

として、果たして鳶は何年生きるのだろうか。あの鳥だって哀れな文太のように、いつ

かは突然命が燃え尽きるのだろうな』ふとそんな事を考え、彼はその後、何の音沙汰も

無い癌に侵された若い司書教諭、仁昌寺和子の事を思い出している自分に気付いた。

 

             f:id:napdan325:20190318005301j:plain

緒永廣康 「ソメチメス」(sometimes)57

37.ただその四十分の為だけに(「告別演奏會顛末記」その後)(19)

 

 結局、アメリカのニクソン大統領は辞任し、軍用ヘリコプターに乗ってホワイトハウ

スから姿を消した。極東の日本にそのニュースが報じられた頃、東京は漸く鬱陶しい

梅雨空が晴れて、次第に日差しが強くなって来た。そしてヒナコさんグループは週に1

度の練習を欠かさず続けていたが、レパートリーは相変わらずヒナコとムーのオリジナ

ル2曲のままで、それなりに仕上がっていたものの練習は今一つ盛り上がりに欠けて

いた。

 そんなある日、ムーが練習場所に発売間もないアイワのラジカセを持ってやってき

た。「これを聴いて貰いたいんですけど」彼女は少し恥ずかしそう言うとプレイボタン

を押した。ムーの男言葉は次第に無くなりつつあるようだった。直ぐにピアノの音がし

て歌が始まった。どうやら新しいオリジナルらしい。

 それは掴みどころの無い不思議な曲だった。一度聴いただけでは理解出来ない。もし

かしたら大傑作か、それともとんでもない駄作か。演奏が終わった時、誰も何も言わな

い。少し間を置いて漸くクマが口を開いた「もう一回聴かせてくれる」

 再びテープが回り始め、まるでインドの行者が瞑想を行っているかのよう時間が訪

れ、3分強が過ぎ、回転が止まると、今度はアグリーが言った。「渋いんじゃない」

 それを受けてクマも頷いた。「難しい曲だね。でもとてもいい、何と言うか、凄く個

性的。まるでデイビッド・クロスビーのデジャ・ヴみたいだ」

 その曲を知っているアグリーは『その通り』と言わんがばかりにうんうんと首を振り

ながら手を叩き、同意であることを示したが、聞いた事の無いムーとヒナコはそれこそ

狐につままれたようにキョトンとしていた。

 それを見てクマは説明しようと考えて二、三言葉を探した結果、多分理解して貰えな

いと思い直し、笑顔を浮かべただけだった。そして全く関係の無いことを言った。「キ

ーはCmかな。でもカポは使いたくないな」

「どうして」ヒナコが聞く。

「だって、カッコ悪いじゃない」

クマは何時の頃からか、ギターにカポタストを付ける事を極端に嫌うようになってい

た。それは折角楽器が持っている音域を自ら放棄するような行為、そう言えば恰好良過

ぎ、実際はただ単に面倒なだけだった。

「これ、コンサートでやれますか」ムーは心配そうな顔をしてクマを覗くように訊ね

た。

クマは「うん」とだけ答えて暫く宙を見つめた。そして漸く答えた。「このテープ貸し

てくれる」

 

 クマは家に帰ると早速テープを取り出しカセットデッキにセットしてプレイボタンを

押した。

ヘッドフォンの中で流れる曲は相変わらず摩訶不思議な旋律だった。『これをどうギタ

ーで伴奏し、コンサートで演奏するのか』クマは目を閉じたまま自分の眉間に皺が寄っ

ているのを認識していた。

 三度目の再生が終わった時、突然クマの脳裏にある言葉が蘇った。しかもそれは数時

間前自分が発した言葉だった。『まるでデイビッド・クロスビーのデジャ・ヴみたい

だ』

 『そうだ、その通り。デジャ・ヴに使われているチューニングを使えばいいのだ』

それはクロスビーがよく用いるEBDGADという変則チューニングで、それを使った「グ

ィネヴィア」という曲をクマやアグリーは3月の2-4フェアウェル・コンサートで演

奏していた。

 しかし、これでプレイするとキーはEmになって、オリジナルのCmから大幅に上がっ

てしまう。後はムーの音域に頼るしかなかったが、こと音楽に関してクマは全く相手を

思いやる優しさは欠落していた。そしてライブに充分対応出来るようアレンジを仕上げ

たのは、それから3時間後の事だった。

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緒永廣康 「ソメチメス」(sometimes)56

36.ただその四十分の為だけに(「告別演奏會顛末記」その後)(18)

 

  6月に入って鬱陶しい梅雨空が続いた。そして下旬から本格的に降り始めた雨は、

月が替わると台風8号の影響を受け、全国に甚大な被害を与えた。クマ達が住む世田

谷、目黒付近も一級河川多摩川や、彼等が通う都立深沢高校の傍を流れる呑川流域

に、多数の床上浸水が起きたが、幸い仲間の家は全て被災を免れた。

 月末にはアメリカ合衆国で国を揺るがす重大事件が発生。新聞やテレビはそのニュー

ス一色に染まり、連日特集記事や番組を報道し続けていたが、クマは一体何が起きて、

何が問題なのかよく理解出来なかった。

ウォーターゲートって何んなんだ」彼は先だって病院の受付で味をしめた、「とに

かく質問」という手段を試してみようと、廊下で会ったアグリーに聞いてみたが、彼も

また内容を把握しておらず、全く見当外れな「鉛の兵隊とニクソンがやって来た」とニ

ール・ヤングの”オハイオ” という曲の歌詞を呟いた後、「それより、コンサートで何や

るんだよ」と逆に質問する始末だった。

「うん、ムーの ”ぎやまんの箱” と、ヒナコの ”さようなら通り過ぎる夏よ” は決まって

るよね」そのクマの言葉にアグリーは黙って頷いた。

「それで、要はどれだけの時間というか、何分間、我々が貰えるかなんだけど、30分

ならやれるのはせいぜい5曲か6曲だよね。そうすると後4、5曲用意すればいいって

事になる。ここ迄はいいかな」

それに対してもアグリーは黙って頷く。

「それで、あの2曲はどっちもスローなんで、メリハリ付けるにはやっぱし速いのが欲

しいんだよね。それで考えたんだけど、一曲目はアータの”観覧車”を持ってくるのはど

う。A面トップだよ」 A面トップ、それはプロのミュージシャン達が発表するアルバ

ム、即ちLPレコードに於いて、最も重要な一曲目の事を言う。特に様々なレコードを聴

き漁っているアグリーは、有名なアルバムの様々な出だしを検討し、彼等がいつの日に

か世に問うであろうファーストアルバムのコンセプトばかり模索していた。

「あー、なるほど。でもチャンランシャを生ギターでやるんかあ」

「観覧車」は前年12月、アグリー、センヌキ、クマの三人でエレキギターを使い録音

したアグリーのオリジナルで、サビの部分が4拍子から3拍子に変わる、なかなかキャ

ッチーな曲だった。

「イエス。アレンジも考えた。変則Eオープンでやる、”青い目のジュディー"と同じ」

「はー、いきなり変則」、ともすればポップス色を失いかねない変則チューニングに、

アグリーは難色を示す。

しかし、何かと技巧に走りがちなクマの頭の中では、もう既にEBEEBEにチューニング

されたギターの音が鳴り始め、意識はまた別の世界へ行こうとしていた。「大丈夫、任

せてチョーダイ」まるで財津一郎のようなウラ声でクマが言った。

そこへ、たまたまセンヌキが通りかかった。「オタクら、歌は決まったの」

「ああ、今その話をしてたとこ。クマが”観覧車”を変則チューニングでやるって」

「えー、またー」

「そうだろー、そう思うだろー」

それを聞いて身の危険を察知したのか、急遽異次元から戻ったクマが、右の人差し指を

車のワイパーのように左右に振りながら言った。

「君達は何も解っていない」

 

 そんなやり取りがあって間もなく、「ヒナコさんグループ」が顔を揃え本格的練習を

開始した。

練習は基本的に週二回、場所は主に放課後の教室であったが、天気のよい日は校舎の屋

上に上がったりもした。

 「先ずは決まっている”ぎやまん”と”夏よ”を仕上よう」クマの号令の下、三人でチュー

ニングを合わせる。とにかくクマは徹底的に合わないと気が済まない性分で、微かな音

の揺らぎにも神経を尖らせた。440Hzの音叉を膝で叩き、ギターのトップに当てると

Aの音が出る。それに5弦の5フレットのハーモニクスを共鳴させると、音の違いが明

確に判る。クマもうこれを5年間もやってきた。そうやって合わせた5弦の音を基準

に残り全ての弦を合わせ、それが終わるともう一度同じ事を繰り返す。そして各弦をチ

ョーキングで引っ張りまた調律を確認。大した時間ではないが、周囲の者をウンザリさ

せるには十分だった。

「そろそろやる」クマの言葉に三人共やれやれという顔で溜息をつくしかなかったが、

アグリーとムーは必要に迫られて自分のギターをクマの音に合わせた。

 ”ぎやまんの箱”はムーが作った典型的なスローバラードのフォークソングだった。も

し、このバンドに参加していなければクマもアグリーも決して演奏するような曲ではな

かったが、今更そんな事は言えず、何よりクマは自分が持っている音楽的知識と技術の

全てをここに注ぎ込むと決めた以上、後戻りは出来なかった。

「三番まであるから徐々に盛り上げて行きたいんだけど、普通に考えれば2番まではア

ルペジオ、三番で一気にストロークってとこかな。他にはギター3本の内どれかにカポ

とか」クマは大雑把に自分の考えを述べた。

それに対しアグリーが答える。

「俺、ザクロッジのメンバーから12弦を借りてくるよ。そうすれば音も広がるし」

「オッケー、それはいいかも」

「ぼくは何をすればいい」ムーが口を開く。

実際のところクマはムーのギターを全く頼りにはしていなかった。それでも面と向かっ

てそうは言えないので、あまり伴奏の邪魔にならないよう間奏での簡単なソロを任せる

事にした。

 続くヒナコの”さようなら通り過ぎる夏よ”、この曲についてクマは既にプランを持っ

ていた。それは以前アグリーの”星の妖精”という曲で実証済みのギターアンサンブルを

使う事であり、具体的にはオーソドックス・チューニングのギターにDチューニングを

したギターを合わせ、そうする事により音域を広げきらびやかな響きが期待出来た。

「後は、新曲を幾つか揃える必要があるな」クマは自問して頷いた。

 

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緒永廣康 「ソメチメス」(sometimes)55

35.ただその四十分の為だけに(「告別演奏會顛末記」その後)(17)

 

 『変わってないな』六年前二週間余りの間、ずっと閉じ込められていたその建物を、

クマは久し振りに見てそう呟いた。そして正面玄関から中に入ると、ひんやりとして少

し消毒液の臭いが漂う空気が、彼の遠い記憶を呼び覚ました。

 過ぎ去った六年の歳月は決して短くはない。しかし誰にでも、何年経とうと決して忘

れない思い出はある。たとえそれが単に入院であったとしても、十二年の人生で初めて

の経験となれば尚更である。

そしてクマはまた、ある種瞑想にも似た思考の迷路に沈み込んで行った。

 『自分は幼い頃から喉が弱かった。風邪を引くと決まって扁桃腺が腫れ、咳が止まら

なくなる。そして四十度近くの高熱。眠っているのか起きているのか、夢か現か、或い

はそれとは全く別の何かか。そのような状態が三日三晩続くと漸く快方に向う。それが

いつものパターンだった。しかし、あの時は違った。

 「肺に白い影が見えるし、ラッセルが酷くなっている。国立第二病院に紹介状を書き

ましょう」医者が母にそう言った。ラッセル、それは一体何なのか。降り積もった雪を

強靭なプロペラで線路から吹き飛ばす黒い機関車みたいな、いや違う、あれは確かロー

タリー車だ。ラッセル車は、そう、アイロンのお化けみたいな形をした物』

 確かに彼はそんな風に様々な事柄に疑問を持った。それは何事も鵜呑みにせず、先ず

は疑ってかかるという姿勢。その事自体に全く問題はない。むしろあるべき姿だという

自負を彼は持っていた。ただ如何にして疑問を解消するのか。まだ小学生だった頃、彼

が置かれた環境は、彼の好奇心を全て満たす程整ってはいなかった。

 ラッセルの正体は不明のまま、国立の大病院での検査の結果、彼は即日入院治療とな

った。

『聞けばよかったのだ。それに答えられる誰かに』クマはそう思った。そしてそれが最

も安易で且つ確実そうな方策であることも知っていた。

 しかし、彼は出来得る限り自分自身で物事を解決したいと考える人間でもあった。

『そう、ラッセルにしても、入院中、何故ペニシリンを腕に打つのかという疑問も、そ

の場で医者に聞けば、多分小学六年生にも分かり易く説明してくれた筈だ。それをしな

いまま、最寄りの病院から紹介状を受け取っただけで退出し、また、ここ国立第二病院

も退院してしまったのは何故なのか。

 今ここで心に棘が刺さったままの懸案事項を解決しなければならない。長く閉じこも

って来た殻の破壊が、自らの手で出来るようになった事を証明する必要があるのだ。し

かし、それにしても今、自分は馬鹿馬鹿しい程芝居がかった言い方をしている。全く滑

稽としか言いようが無いな』

ともすれば大袈裟な表現方法に走る自分の癖を、クマはよく理解していた。そして、自

嘲しながら、ふと傍らにいるチャコに気づく。

『まずいな、また嫌味を言われるかも知れない。僕は別に異次元にいる訳じゃない』

「構わないわよ」チャコがクマの心の動きを見透かしたように上目遣いで言った。

「私、先生の居場所を聞いてくるわ」そして彼女は総合受付の方に向かって歩き始め

る。

「ああ。僕も一緒に行くよ。ちょっと確認したい事があるんだ」

 チャコが司書教諭仁昌寺和子の病棟を、年長者らしき女性に確認している間、クマは

受付のとなりに座っているひっつめ髪の若い女性に訊ねた。

「あのう、つかぬ事を伺いますが」

「はい、何でしょうか」彼女は顔を上げた。

「この病院の名前が国立第二病院と言うのは何故ですか」クマは少し照れ臭そうに言

う。

 受付嬢は一瞬眉をひそめ怪訝そうな顔をしたが、すぐに笑顔を作り、そして答えた。

「国立第一病院が新宿にありますが、それは知っていますか」

「いいえ、でも第二がある以上、第一があるのが普通ですよね」

「そうですね。でもそれだけではなくて、ここは昔は、海軍軍医学校第二付属病院と言

ったそうです。新宿の第一病院は元は陸軍病院だったので全く違う組織。ただ、第一付

属病院があったのかどうか。それ以上のことは私も判りません」

「そうですか、ふうん、そんな話があるんですね」クマは目を大きく広げ二三度頷い

た。

 実際のところ彼は非常に満足していた。得られた情報はごく僅かではあったが、そ

れをとても貴重な宝石みたいに感じた。

『何しろ、自分から相手に話しかけた事が評価できる。これで、帝国陸軍と海軍の違い

を調べれば、結構面白いレポートが書けるかも知れない』彼が太平洋戦争について知っ

ている事は決して多くはなかった。『今ならまだ生き証人が沢山いるし』

 「また何か考えていた」チャコはピーナッツコミックの登場人物が相手をからかう時の

ような目をしてクマに言った。

「どこだか分かった」彼は苦笑しながらチャコに聞く。

「それが、一昨日退院したんですって」

「えっ、治った訳じゃないよね」クマは確認するかのようにゆっくりと発音した。

「ううん、そうじゃないみたいだけど、詳しい事は判らないので、家に帰って母に聞い

てみます。ごめんなさい、よく調べておけば良かった」

「いや、全然。気にすることなんか無いよ」

「これからどうする」

「そう、家に帰ろうかな、色々ほったらかしにしている事もあるし」

「うん、先生の事何か分かったら連絡する。今日はありがとう」

「いいや」クマは精一杯の笑顔をチャコに向けて言い、そしてギターを弾くような手つ

きをした。

「それより僕はそろそろ仲間の所に帰らなきゃ」

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緒永廣康 「ソメチメス」(sometimes)54

34.ただその四十分の為だけに(「告別演奏會顛末記」その後)(16)

 

 1964年10月、そこでは世界93か国の色とりどりの国旗がはためき、「より早

く、より高く、より強く」をスローガンに、バレーボール、レスリング、サッカーとい

った競技が行われた。そして中でも東洋の魔女、日本女子バレーボールチームが、全国

民の熱い声援に応え念願の金メダルを獲得した事が、いつまでも語り継がれる程、強い

印象を残していた。『そう、最後の得点はソ連のオーバーネットによる一点だった』、

勝敗を決する世紀の瞬間に対する審判の裁定が若干遅く、直ぐには判明しなかった事を

クマははっきり覚えていた。

 あれから10年、駒沢オリンピック競技場は、時折その施設を利用して試合が行われ

るものの、今では専ら地域住民の憩いの場、駒沢公園となっていた。

 ここに来るとクマは、いつもこの施設が建設されていた頃の事を思い出す。彼は小学

一年生の時から、暇さえあれば日々変わる景色を眺める為に、ここを訪れていたのだっ

た。『勿論、家も近かったが、何故、そんな事をしていたのだろう。それもたった一人

で』クマは何度もその答えを探し、ようやくある言葉に辿りつた。「コンストラクショ

ン」。

   constructuon   n. 1 建造, 築造, 建設, 架設:  構造: 建設工事(作業)  2 建物, ・・・

     6 (分・語句の) 組み立て, 構文, 構造 -(和英中辞典 第三版 研究社)   

 クマはその言葉を高校生になってから使い始めた辞書で調べた。そしてそこから見

えて来るものと言えば、むき出しの鉄骨で出来た幾何学模様のような構造物であり、そ

れが駒沢に出来ている競技施設だったのだ。

そして彼は何も無いところでボーリングが始まり、鉄筋、鉄骨が組み立てられ、やがて

コンクリート打ちへ進み、外装が終わるという一連の流れが、曲を作り編曲し演奏、そ

して録音という過程と似ていると思った。

『僕らも何も無いところから自分の頭の中の設計図に従い、音符を組み合わせ、言葉を

紡ぎ、一つの歌を作ってゆく。勿論それは幼稚で拙い物に違いない。しかし誰からも

命じられた訳ではない。純粋に心から、そう、もし本当に心というものが何処かにある

とするならば、その奥底から湧き上がる強い衝動のような情熱が僕らをそうさせるの

だ。果たして、あのような建造物を思い描いた建築家と呼ばれる人達は、どのような思

いから突き動かされているのだろう。もしかしたら建築とは音楽と通じる感性の産物か

も知れない。それは十分あり得る事だ。しかし、それでいて目的の為に虚飾を排しなが

らも、逆にそれが洗練された機能美も生み出す。例えば軍事用の車両、船舶、航空機と

いった物を、それがもたらす悲劇的な結果とは別に、素朴に美しいと感じるようなもの

だ。その美しさは、間違いなく、芸術と呼ぶに値する』

「何考えてるの」チャコの呼びかけにクマは少し遅れて反応した。

「いや、時々何か支離滅裂な発想が次々と浮かぶことがあるんだ。まるでデイドリーム

ビリーバーだね」

「それで私たちの同窓会の女王は誰になるのかしら」チャコは微笑みながら答えた。

デイドリームビリーバーとホームカミング・クィーンは、かってモンキーズというグル

ープが放った大ヒット曲の歌詞だった。

                       Cheer up sleepy Jean
          Oh, what can it mean to a
                                    Daydream believer and a
                                    Homecoming queen?

「そういう洒落た言い方は好きだよ。何だか仁昌寺先生の台詞みたいだ」

「だって教え子だもん」

「そうだった」クマは頷きながら更に続けた。

「あの向こうに見える塔と横の角ばった屋根の建物、最初にあれを見た時、SF映画かと

思った。どうやったらあんな形を思い付くんだろう」

「そう言われればそうね。でもそんな風に考えた事はなかった。クマさんは何にでも興

味を持つのね」

「そうかな、そうかも知れないな」クマはもう少しその話題を続けようかと思ったが、

何故かそこで止めた。目的地が近づいてきたからである。

  二人は駒沢通りを公園の端まで歩いて来た。道はそこで自由通りと交差する。そして

交差点を越えれば目黒区に入り、左手に国立第二病院がある。

『自由通り、右手に行けば "自由が丘" があるからそう名付けられたのか。それにしても

日本らしくない名前だが。確か何年か前、アイジョージが紅白歌合戦で自分のレパート

リーである「自由通りの午後」という歌を歌っていたが、もしかしたらこの道の事を歌

っていたのか』

「あっ、また何か考えてる」

「ごめん、ちょっとね」

「クマさんが考え事している時が解るようになった。眉間にちょっと皺が寄るんだ」

「そうかな、そうかも知れないな」クマは先程と全く同じ言葉で答えた。

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緒永廣康 「ソメチメス」(sometimes)53

33.ただその四十分の為だけに(「告別演奏會顛末記」その後)(15)

 

 「クマさん、こんにちは」特に待ちわびていた訳ではないが、顔を上げるとそこには

チャコが立っていた。

「今度、世田谷区民会館に出るんですって」それを聞いてクマは、少し目を大きく開き

『どうして知ってるの』という顔をした。

「あっ、私、八組の文化祭準備委員なの、だから "ヒナコさんグループ" のメンバーは誰

がいて、区民会館の出演申請をしたって事も知ってるわけ」

「なるほど、それで申請は承認しないぞと脅しに来たわけ」

「なんでそんな風に考えるかなあ、私はそんなに意地悪じゃないわ。ちゃんと承認する

方に手を挙げました」

「それはどうもありがとうございます。で、今日はどのようなご用件でしょうか。あっ

それと、この間のS&Gの感想文、随分立派な論文でした」

「どういたしまして。あの、クマさん」突然チャコはあらたまった声になった。

「なんでしょうか」クマもそれにつられた。

「真面目な話だけど、図書室の仁昌寺先生、知ってる」クマは一瞬顔をこわばらせて、

そして頷いた。

「あの、誰からの情報って聞かないで欲しいんだけど」クマはまた頷く。

「しばらく休んでいるの先生」

「それは知らなかった。このところ図書室に行ってないんだ」

「そう、仁昌寺先生、入院しているの。それでどうもあまり良くないみたい。癌だとい

う話」それを聞いたクマは、今度は眉間に深く皺を寄せた。

「でも一ヶ月位前会った時は、そんな感じは全然無かったけど」

クマは図書室での彼女の言葉を思い出していた。それは人と人との会話は、それぞれ互

いに自分が作り出した相手の虚像に向かって語り掛けているというものだった。最初に

それを聞いた時、クマは何となく違和感を感じたが、後になって考えると至極当然の事

のように思えてきた。何故なら人は誰しも相手の反応を予想しながら言葉を発し、時に

は想定外の対応に戸惑い、狼狽し、突如陥った局面を挽回しようと更にその虚像に問い

かけるのからである。

『しかし、仁昌寺という司書教諭は、何故自分にそんな事を言ったのだろう。彼女が作

り出したクマという人間の虚像は、そのような言葉を欲しているように見えたのだろう

か。そしてそれが、あながち見当違いではなかったのは何故なのだろうか』クマは突

然、それを確かめたい衝動にかられた。

クマはチャコに聞いた。「ところでチャコさんは、どうしてそんなに仁昌寺先生につい

て詳しいの」

「だから情報源は言えないの。ただ私が中学生の時、大学生だった仁昌寺先生が私の家

庭教師をしていたの。この学校に転校を決めたのも彼女がここにいたから」

「ふうん」とクマは呟き、これまでの話をもう一度自分で確認するかのように、二、三

度頷いた。

「先生の入院先は知ってる」

「ええ、国立第二病院」

「近いね。そこの目黒通りを真っ直ぐ行って、駒沢公園の横の自由通り沿いにある」

「よく知っているわね」

「小学六年の時、肺炎で10日位入院した事があって、毎日朝晩ペニシリンを腕に注射

されて、あれは痛かった」それまで尻にするものと思っていたペニシリン注射を、腕に

する理由をクマは医者から聞き逃していた。

「チャコさん」クマは更にあらたまって言った。「チャコさん、先生を見舞いに行こう

と思うんだけど、大丈夫かな」

「多分そう言うと思った。大丈夫よ」

「どうしてそう言うと思ったの」

「先生がそう言ったから」チャコは謎めいた微笑みを浮かべクマを見た。そしてこう付

け加えた。「私も一緒に行っていい」

 

 翌日、クマは正門前の自転車置き場でチャコと待ち合わせた。その日は、本来であれ

ば「ヒナコさんグループ」の第一回目の練習が予定されていたが、クマは見舞いの方を

優先し、メンバー各人には事情を説明して、三人だけでやるか若しくは順延を申し出て

いた。勿論三人とも承諾で、日を改めることになった。ただその時、ヒナコだけはチャ

コの名前を聞くと、少し眉をひそめた。

 病院の面会時間は午後三時からだった。クマはその日も午後の授業は無く、チャコも

偶然同じだった。

「お待たせしました」午後1時ちょうどにチャコが校舎から出てきた。

「今日、文化祭準備委員があるんだけど、サボちゃった」彼女は悪戯っぽく笑みを浮か

べ肩をすくめた。

「昼ご飯は食べたの」

「ええ、母が作ったお弁当。クマさんは」

「僕はパンを買って済ませた」

「面会時間は3時からだけど、少し早いし、どうする。ぶらぶら歩いて行って駒沢公園

で時間を潰すのはダメ」

「全然」早めに目的地付近まで行くことはクマが日頃行っている行為だった。

そして二人は歩き始めた。

「クマさんは何処に住んでるの」

三軒茶屋。チャコさんは」

「都立大、というか柿の木坂」

「歌に出て来る所」

「えっ、いえ、あれは違うみたい。だって国鉄の目黒駅だって、三里もないもの。でも

何処の事を歌っているのかは知らない。クマさんって歌謡曲も聞くの」

「いや、でも歌くらいは知ってる。確かに ”柿木坂は駅まで三里" って歌ってるね。多分

田舎なのかな」クマは妙に納得した顔になった。

「ねえナッパちゃんの話、していい」

「いや、今はね。いつかどこかで、もし話する機会があったら」

「そう、そうね。そうしましょ。でもひとつだけ聞いて」

「何」

「彼女はクマさんの事、本当に好きだったの。それでもっと色々な事を話したかった

の。クマさんだったら自分の事を解って貰えると思っていたの」

「それで僕がナッパさんの期待を裏切ったんだ」

「違う、そうじゃない、その逆よ。彼女がクマさんの事、誤解しちゃたの。彼女はクマ

さんを傷つけてしまったってすごく後悔しているの」

クマは少し難しい顔をして黙って歩いた。そして日体大の角を左に曲がり、深沢不動の

交差点までを見下ろした。

『僕らもこの坂を下るように、ゆっくりと歩いて行けたら良かったのだ。そう、まるで

熟練したパイロットが、全く機体を揺らすことなく高度を下げてゆくように』

 

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緒永廣康 「ソメチメス」(sometimes)52

32.ただその四十分の為だけに(「告別演奏會顛末記」その後)(14)

 

 結局その日、バンド名は決まらなかった。その一番の原因は誰も気の利いた名称を思

いつかなかったからだ。それでも文化祭準備委員会に出演申請の手続きをしなければな

らない。「取敢えず発起人の名前をとって『ヒナコさんグループ』で出しておこう」ク

マの言葉に誰からも異論は出なかった。

 「そんなことより、オリジナルって何曲あるの」出来るだけヒナコとムーを前面に出

したいと考えているクマが切り出す。

「ムーは結構いっぱいあるよね、ねえ」ヒナコがムーを見ながら確認をする。

「数はあることはあるんですけど、人に聞かせられるようなのは二、三曲かと」普段女

の子同士で話している時に比べ、ムーの声はやけに小さく、やっと聞こえる程度だっ

た。

「どんな曲、ちょっとやってみてよ」クマの勧めにムーはおそるおそるアグリーのギタ

ーを弾き始めた。それは "ぎやまんの箱" とタイトルされた、美しいメロディーラインを

持つスローバラードであったが、クマは何となく物足りなさを感じた。

『何が足りないのか、歌詞が今一つ判り辛いせいか』アグリーの意見も聞いてみたかっ

たが、作者本人がいる前であからさまに話す訳にもいかない。

すると、突然アグリーが言った。「いいじゃない」

『えー、そうなのか』アグリーの言葉をクマは少し意外に思ったが、いきなり最初から

否定的な感想を述べるよりは、大人の対応だなと考え直した。そしてそれは、自分には

備わっていないらしい「思いやり」とか「優しさ」とか、恐らく人がそんな風に呼び、

さも人間にとって大切な行動や言動であるかのように位置づける、他者への寄り添う気

遣いである事を彼は知っていた。

 

 「・・・だから僕はね、もし僕がこうすれば、こんな事を言えば、相手が喜ぶだろう

って分かっている時でも、敢えてそんな事をしようと思わない。そういうのは何か見せ

かけの白々しい優しさみたいで大嫌いだな」

「そうかしら。私はそうは思わない、私はやっぱり人の為に何かしてあげたいわ。人間

には思いやりが必要よ」日頃とは違い彼女は意外な程、強い口調で答えた。

「でも仮に、人を思いやることで自分が疲れるとしたら、自分を殺す事で人に尽くすと

したら、それは誠意とは言えないんじゃないかと思うけど」

「そうかも知れないわ」

「だから僕は人に対して優しくあるよりも、誠実でありたいと思うんだ」

「でもそれは、あなた自身に対しては誠実であっても、相手の人に誠実であるとは限ら

ないでしょう。たとえ自分が、どんなに辛い状況に置かれて本心はそうでなくても、人

を思いやるのが本当に優しい人ではないかしら」

「そうかな、それは見せかけの優しさだと思うよ。自分を偽るということは、裏を返せ

ば相手を欺いてる事になるんじゃないか。確かに、よく女の子は、どういう男性が好き

とか聞かれると、大概は優しくてユーモアのある人って答えるけれど、そしてその優し

さというのが、相手の喜ぶ事をしてあげる事ならば、僕は全然優しい人間じゃないね」

しばし小休止があった。

「いいえ、あなたはやっぱり優しい人だわ」彼女は殆ど自分に言い聞かせるように小さ

く呟いた。

  生きとして生けるものが眠りから覚め、全てが新しく始まるような春の日、明治神宮

御苑内にある菖蒲園のベンチに腰を掛け、クマはナッパと暖かな日差しを浴びていた。

しかし、何一つ落ち度など無い心算のクマは、その降り注ぐ陽光、心地良いそよ風、そ

して眩しい新緑、それら全てのものから何故か見捨てられてしまったのだ。

 

 『あの時自分は、何故あんな事を突然言いだしてしまったのだろう。別にその時、そ

れを言わなければならない理由など、何一つ無いにもかかわらず』これまで何度も自問

自答を試みた事を、クマはまた考えていた。彼はただ噓偽りのない自分自身を晒した上

で、ナッパの審判を受けようと試みたのだ。それこそが今までの人生の中で、最も心を

惹かれ、また愛されたいと願った女性に対する、誠心誠意の姿勢だと考えたのだ。そし

て彼の妥協のない愛情は、想いばかりが空転し、容赦なく砕け散ってしまったのだ。

ナッパが去ってしまった今、彼は漸く冷静な気持ちで、自分が置かれた座標を理解出来

るようになりつつあった。

 

 「クマさんはどう思う、ムーの曲」ヒナコの声で彼は我に返った。

「うん、いいと思うけど、スリーコーラスあるんで何処かにアクセントが欲しいね」

クマはこれ迄であれば「ちょっとたるいね」と言うところであったが、ぐっと抑えた。

「どうすればいいですか」ムーが真剣な顔でクマに訊ねる。

「そうね、一、二番はアルペジョでやって、三番の伴奏をもっと賑やかにストローク

するとか、あとハモるとか」

それを聞いてムーは黙って頷く。その時クマは、ムーの持ち味はヒナコと違い女の子ら

しからぬ野太い声だと気が付いた。 

「フェアウェルで歌った "落ち葉の上を" なんかは怨念が籠ったよう歌で、なかなか良か

ったんじゃない」

「ううん、あれはオリジナルじゃなくて、古井戸の曲」

「えっ、そうなんだ。なあんだ」クマは日本のフォークソングには全く疎かった。

 「クマさんあんな感じの歌が好きなんだ」ヒナコが意外という顔をする。

「まあ、キレイキレイな曲ばっかりじゃないよ好きなのは」

「ところでヒナの曲は」今度はアグリーが聞いた。

「私は一曲だけ」

「それじゃあ曲が足りないよ」クマとアグリーは同時に笑った。

「だからクマさんやアグリーどんの歌を考えたの。それに私達の曲って、静かなのばっ

かだから」

「俺らだってそんなハードな事やってる訳じゃないし、だいたい生ギターでやるんだか

らね」アグリーがそう答えると、クマが付け加えた。

「しかも、もうCSNYの真似をするのも何だしね」

 

 世田谷区民会館のステージまであと四ヶ月。

 

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